1月の法話集 ~光陰矢のごとし~
新年明けましておめでとうございます。さて、江戸時代のことですが、新春を迎えた人々でにぎわう町角で、一人のお坊さんが、なにか呼びかけています。「いつかは、このような姿になるのじゃぞ。心して日日を生きて行かれよ。光陰矢のごとしですぞ!」声にさそわれてお坊さんを見た人々は、びっくり仰天。それもそのはず、お坊さんが手にしている杖の先に、人間の骸骨がぶらさげられているのです。骸骨は不気味な顔で道行 人をにらみつけています。「正月早々縁起でもない。あの坊さん、頭がおかしくなったのだ!」「おーい坊さん、うちの前では立ち止まらないでくれ、客がみんな逃げてしまう」街のあちこちから、お坊さんをののしる声が聞こえます。けれどお坊さんは平気な顔をして相変わらず、「光陰矢のごとしですぞ!いつの日か、こうなるのですぞ!」と呼びかけているばかり。このお坊さんは、トンチで有名な一休さんこと一休禅師なの です。本当に私たちは、今日がだめでも明日があるさと、ついつい甘えた生活をしがちです。けれど一休禅師が骸骨を持って示された通り、いつの日か、いいえ明日にでも、この世に別れを告げることになるかもしれません。ならば、今生かされているこの命、なんとありがたく、よもや無駄づかいは できません。
光陰矢のごとし。今というこの時を大切に生きることが、明日へとつながることになるのです。こんな歌があります。
今 今と 今にいうに今ぞなく
今というに 今ぞ過ぎゆく
このことを心に銘記して、どうぞ充実した日々をお送りください。
1月の法話集一覧表へ戻る