2月の法話集

～菩薩さまは長距離ランナー～

仏教の"悟り"とか"悟る"ということについてみなさん関心をお持ちのようですね。先日も中年の男性から問いかけられました。
「修行すれば悟ることができるのですか。修行した坊さんはみんな悟ったのですか」
なかなかむずかしい質問です。少々悩みながらこんなことをお話ししたのですが……。
「修行をすればお悟りを開くことはできます。けれどそれは無限の彼方かもしれません。また修行したお坊さんだれもが悟りを開 いているかいないか、と問われますと、まだまだと申し上げます。実は日々私たちがお参りしている仏さまのなかで、菩薩と呼ばれる方々、たとえば観音菩薩（かんのんぼさつ）、地蔵菩薩（じぞうぼさつ）、文殊菩薩（もんじゅぼさつ）、この菩薩さま方もまだお悟りは開かれていないのです。悟りを求めて修行を怠ることはないけれど、一方でも多くの人々を救いたいとの願いを持って活躍されており、一人残らず救われていないかぎり、自分の悟りもあり得ないといわれるのです。そのためには急がずー歩一歩ゆくという、いわば菩薩さまは悟りを求める長距離ランナーですね。お坊さんたちも菩薩さまと同じ願いを持ち、行いをなさっているわけで、そういう意味からするとまだ悟ってはおられないのです。実はこのことは何も菩薩さまやお坊さまだけのことではなく、みなさんとて同じことなのですね。みなさんもお悟りを求めて黙々と歩いておられるのです。このお悟りを求めて一歩一歩、黙々と進むところに大きな意味があるのです。結果ではなく過程です。お悟りに達するまでの道のりがとても大切なのです。長距離ランナーは、遠いゴールを見ているのではなく、目で見える範囲に目標をつくり、次々にそれを追いかけるそうです。その結果いつしかゴールインする。お悟りも同じですね。仏さまの教えに導かれて一歩一歩、一日一日を歩むのです。菩薩さまも私たちも、お悟りを求める長距離ランナーです。」

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