2月の法話集 ~自分自身を幸福と思え~


お寺の庭で、元気いっぱいに駆けまわって遊んでいる子どもたちを見ていると、思い出すことがあります。それは、近ごろではあまり報道されなくなりましたが、ベトナムとカンボジアの戦争にまきこまれて、タイの難民収容所に送られてきた子どもたちのことです。家族と離ればなれになった子どもたちですが、その悲しみを心の奥におしこんで、元気いっぱいに遊んでいました。その側で、みんなの遊びをじーっと見ている少年がいます。仲間はずれになったのかなと側へ寄ってみると、彼の右足は付け根の所からまったくありません。逃げてくる途中、地雷の破片を受け、赤十字隊の手によって切断され、やっと生き残ったのでした。同じ年齢の仲間が、跳びはねて遊んでいる姿をじーっとみつめている彼にとって、どれほどくやしいことか、どれほどうらやましいことか、手にとるように分かります。幾日か難民キャンプを訪れる内に、彼とも話すようになりました。彼は英語を少し話すことができるので通訳も楽でした。いろいろの話の間に、彼がこんなことを言うのでした。
「私は片足で助かった。とても幸福です。両足やられた友達もいる。目をやられた人もいるはずだ。私の父も母もどこにいるか分かりません。三人兄弟だったけど、いつ会えるか・・・両親がいつも言ってた。今の自分を幸福と思え。まわりの人と比べるな。ここに生きている自分自身を幸福と思いなさい、と。」
なんと力強い言葉でしょう。ともすると、他人と比べてグチばかりこぼす私たちに、彼の一言は深く考えさせられるものがあります。



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