2月の法話集 ~瓦となりて全(まった)かるべし~


こんな言葉に出会いました。
「宝石とならんよりは瓦となりて全かるべし」
というのです。申すまでもなく、人生の生き方を示す言葉ですが、意とするところは、誰からもチヤホヤされる宝石のような人間になるより、人目にふれずとも、自らの力を精一杯出し切って、その使命を果している、たとえば屋根の瓦のようになりなさいというのです。それも"全かるべし"というのですから、完全な瓦になるということです。屋根にあって仲間と手を結び、雨漏りを防ぎ、雪が積もっても大雨が降っても、ずり落ちることがない。砕けもしない。また一枚きりで他へ移ったり世を渡ることもできない。屋根を守るという連帯の中で完全な使命を果たす。これが"凡となりて全かるべし"です。私たちは大小の差はあれ、いつもあれこれと不満を言います。世の中をそねみ、運をのろい、人を悪く言ったり、自分を甘やかしたり、都合の悪いことがおきれば逃げてしまったリ・・・。なかなか"完全な瓦"のようにはまいりません。しかし、日ごろの努力精進によって完全なものに近づくことのできるのも事実です。京都や奈良のお寺の屋根を見上げると、黒々とした大きな瓦がびっしりと並んでいます。よくぞ、あれだけの数がずり落ちることなく整っているなと感心せずにはおられません。完全な瓦たちが、さらに完全を目指して努力しているからに違いありません。



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