2月の法話集 ~心やさしいいじめられっ子~
"いじめ"が小学校、中学校で問題になり、先生や父兄を悩ませていますね。先日こんな話を小学校の先生からうかがいました。小学校の先生になって六年目、A子先生は五年生の受け持ちになられました。昨年の秋、運動会が終わったころ、突然A子先生のクラスに"いじめ"があることがわかりました。それは、生まれつき近視で眼鏡なしでは何もできないTちゃんをみんながいじめているというのです。数人がTちゃんの眼鏡を隠してしまうというのです。こんな"いじめ"をじっと見つめていたE子ちゃんが、ある日みんなにいいました。
「そんなに弱いものいじめが楽しいの!」
この日から"いじめ"はE子ちゃん一人に集中しました。休憩時間が終わり教室に帰ると、教科書がありません。お習字の道具が、使い終わった真っ黒な水のなかに投げてありました。どこか元気のないE子ちゃんから実状を聞いた先生とお父さんお母さんは、びっくりしてしまいました。はじめてほんとうのことを話したE子ちゃんの大きな目から、いままでたまっていた悲しみやさびしさが涙となってあふれ出ました。そんなE子ちゃんにお母さんが問いました。
「なぜ黙っていたの? なぜ話してくれなかったの……。」
E子ちゃんが涙をふきふき語ったことは・・・・・。
「もっとかわいそうな子がいるの。四年生にも、三年生にも。その子たち、養護施設から来ているの。いじめられても、いつもニコニコしている。私はこうして話せるお母さんがいるけれど、あの子たちにはいないわ。きっとどこかで、一人で泣いたり、じっと耐えていると思う。それを思うと私、泣けないもん。」
何て心やさしいいじめられっ子なんでしょう。先生とお父さんお母さんの目にキラリと光るものがありました。
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