2月の法話集 ~四苦八苦"は仏教語~


受験のシーズン到来。私も知人の受験生に励ましの言葉の一つもかけてあげたくて電話をしますと、返ってくる言葉が、「いやあ、"四苦八苦"ですよ!」 のひと言です。四苦八苦。四つの苦しみ、八つの苦しみ。実は、この〝四苦八苦〟は仏さまの教えを示す仏教語なのです。まず四苦。四つの苦しみとは、生老病死(しょうろうびょうし)と申しまして、お釈迦さまが明確になさった、人間としてだれもが持っている苦しみのことで、一にこの世に生を受けること、二に年老いること、三に病気になること、そして四に死ぬこと。この生老病死を四苦といいます。さらにこの四苦につづいて、私たちがこの世に生きていくうえで、逃れることのできない四つの苦しみがあるとお釈迦さまは教え示されました。一つは、愛別離苦(あいべつりく)と申しまして、愛する人々と別離する苦しみ、二に怨憎会苦(おんぞうえく)といってうらみ、憎む人と出会う苦しみ、三には求不得苦(ぐふとくく)といい、お金であれ地位であれ名誉であれ、求めるものを得られない苦しみ、そして四つ目が五羅盛苦(ごうんじようく)で、身体と精神の苦しみ。はじめの四つの苦しみと、あとにつづく四つの苦しみを合わせると八つの苦しみになるところから、"四苦八苦″という言葉が生まれているのです。この八つの苦しみは、人間であればだれもが分けへだてなく持っている苦しみであることを、お釈迦さまはしっかりと見極められて、この苦しみから救われる道、み仏の教えを探し求め、発見し、私たちに教え示されたのでした。"四苦八苦"といえば、いまでは単に物ごとがうまく行かないであくせくする意味で使われますが、実は、仏さまの教えの出発点になった重要な意味を持っている仏教語なのです。



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