2月の法話集 ~お袈裟のルーツは~
お釈迦さまがおいでになったころのことです。お釈迦さまを心から敬って、そのみ教えを守って生きていたビンビサーラ王が、お釈迦さまにお願いしました。
「お釈迦さま、私は先日、お釈迦さまとばかり思って礼拝いたしたら、全く人違いでした。誠におそれ入りますが、だれからもお釈迦さまとすぐにわかるものをお召しになっていただくわけにはまいりませんか?」
お釈迦さまはビンビサーラ王の申し出がもっともなことだとお考えになり、心がけておくことを約束されました。いつの日か、お釈迦さまが南インド地方を旅されていたときのことです。目の前に広い広い田んぼが広がり、人々や牛が働いています。田んぼと田んぼの間にはまっすぐに畦道(あぜみち)がつくられ、豊かな水を得た稲がスクスクと伸びています。とても平和な穏やかな風景です。お釈迦さまがお弟子のアーナンダさまに申されました。
「アーナンダよ。私たち修行者が身につけるものは、目の前に広がる田んぼの形のように、長い布と短い布をつなぎ合わせたものにしよう。布は新しいのものであってはならない。亡きがらを包んでいた布や、人々が使い古した、もうだれもがほしいと思うことのない布を、拾ったり布施を受けて使うことにしよう。色はカーシャ(茶褐色)に染めよう。そうだ、この着色を色の名を取ってカーシャ(袈裟・けさ)と呼ぼう。カーシャは欲を捨てて、本当に幸せになる教えを求めて修行する物が身に着けるのだ。田んぼの稲が実って人々に米を与えるように、私たちは真実の教えの種をまいていくことにしよう。」
いまもお坊さまが身に着けておられるお袈裟のルーツがここにあるのですね。
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