3月の法話集 ~お父さんの通信簿~


通信簿をもらった日の夕ごはんのことです。A君の顔は、いつ、その話がでるか気になって仕方ありません。実のところ、前学期よりあまり成績が上がってい ないからです。たった一つ上がっているのは体育が3から4に上がっているのです。この程度では、お父さんもお母さんも喜んでくれません。なぜなら、大方、 通信簿の評価というものは、国語、算数、社会、理科あたりへ注目されるからです。
夕食が終わるころ、ついに出ました。
「今日、通信簿ももらった日じゃね。どうじゃった。みせてみぃ!」とお父さん。
「あっ、そうそう、忘れておったわ!見せて見せて!」とお母さん。
A君は、覚悟を決めて、両親に見せました。まずじーっと見ていたお母さん。
「うーん、なーににも上がっとらんね。」
A君の顔はまっ赤です。その時、
「よう、体育が4になっとるじゃないか。」
「そうだよ、父さん、4に上がったよ!」
体育が4に上がったことを認めてくれたお父さん。A君はうれしくてたまりません。ところが、それだけではなく、お父さんが一枚の紙を出したのです。
「学校の先生は先生で通信簿つけたじゃろうが、父ちゃんも、つけとったぞ。」
「えっ、父さんがボクの通信簿を?!」 お父さんの通信簿には、いくつかの項目があって「よくできるようになった」「だいぶ良くなった」「まだまだダメだ」などが印されています。
「お父さん、おまえのことを毎日見ていたのさ。あいさつがちゃんとできるか、家族で約束した手伝いはできるか、そんな中で父さん一番うれしかったのは、寝 たきりのじいちゃんを車イスで、毎日外へ連れて行く約束、よーくやってくれた。おまえの通信簿は満点じゃ!」
A君は心の中がスカッとしました。



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