3月の法話集 ~涼しい目と柔らかい耳~


仏さまのなかで、大変親しみ深いお方に観音さまがおいでです。全国各地に観音霊場があって多くの方々がお参りになることからも、観音さまがどれほど私たちの身近な仏さまであるかがよくわかります。
観音堂にお参りして見上げると、"施無畏"(せむい)という額が掲げられています。施無畏の施は「ホドコス」、無は「ナシ」、畏は「オソレ」という意味で、つまり"おそれることなく行きなさい。私が見守っていますから"という観音さまのみ心です。観音さまは慈愛に満ちた涼しい目を向けてくださいます。観音さまは大きく柔らかな耳をお持ちでどんなことでも聞いてくださいます。
若いお母さんにお願いしたいのです。どうぞ観音さまになってください。観音さまになって、涼しい目と柔らかい耳でお子さんを守ってあげてください。
お乳を飲ませておいでのお母さんの眼を、じいっと赤ん坊が見つめています。このとき、お母さんの眼がテレビに向いていたら、赤ん坊はさびしいのです。涼しい眼でじいっと赤ん坊の目をみつめてあげてください。「ママ、ママ」と話しかけているお子さんの言葉に耳を傾けてあげてください。
お母さんはこの世でたった一人の、何らおそれることのない大好きな人。「うるさいわねえ」などといわずに柔らかな耳を近づけて、「ウンウン」とうなずいて聞いてあげてください。お母さんこそ、そのまま観音さまです。観音堂によくかかっているいま一つの額は"慈眼視衆生"(じげんししゅどう)です。"慈愛の眼はすべての人の心をやわらげ、大きな慰めと励ましになるのですよ"という観音さまのお声です。涼しい目と柔らかい耳を持ってください。



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