4月の法話集 ~『衆盲摸象経』に学ぶ~
お釈迦さまがジェータヴァナにおられた時のことです。一人のお弟子がやってきて申しますには、一部の修行者たちが激しい口論をしており、今にも取っ組み合いがおこりそうだというのです。
たとえば、一人が「人は死んでも次の世界がある」と言えば「いいや人に死後はない」と言いはる者など大混乱だと。そこでお釈迦さまは、すぐさまそこへ行き、こんな話をなさいました。
昔、ある城の王が一頭の象を庭に呼び寄せて、次に三人の目の見えない修行者を招きました。そして「ここに象がいるのだが、さあ、手でさわってみておくれ。その後、象とはどんなものであったか私に教えてほしい」と言いました。
目の見えない三人は、おそるおそる象を手でさわってきました。やがて目の見えない三人の修行者は、象から離れて王の前に立ちました。
「王さま、象はまるで柱のようでございます。」
「いいえ王さま、象はホウキにそっくりでございます。」
「王さま、私はよくよくこの手でさわって見ましたが、杵のようでございます。」
足をさわったものは柱といい、象のシッポをさわったものはホウキと言い、牙をさわったものは杵といい、自らの言い分でケンカを始めたのです。お釈迦さまはこの話をされて、口論をしていたお弟子たちをいさめられました。そして、
「自分がふれた一部分だけを見て自分の主張が正しいと言いはるから、いつまでたってもこの世に調和ある世界が実現しない。自分の主義主張のみを正しいとする態度を捨て、全体を見渡す眼を大切にすべきである。」
と教えてくださったのでした。
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