4月の法話集 ~ノーサイド~


太平洋戦争が終わってまもないビルマでのできごとです。ビルマで戦った日本の兵隊さんたちは捕虜収容所に入れられ、イギリス軍の手によって管理されていました。
ある日、日本の兵隊さんに向かって、イギリスの兵隊さんが言いました。ラグビーができる人はいませんか?
日本側はさっそく集まってお互いに確かめ合いました。すると六大学でラグビーの選手だったという人が数名名乗りをあげました。不足したところは、サッカーをやったことがあるという兵隊さんでまにあわせました。
さて、思わぬところで、イギリスと日本のラグビー国際試合が始まったのです。イギリス人も日本人も、すべてを忘れて、ラグビーに夢中になり、大声で観戦をしたのでした。
結果は日本の負けでした。しかし、試合が終わると、審判の声がひびきました。
「ノーサイド・・・。」
ノーサイドとは、右も左もなく、敵も味方もないということなんですね。ノーサイドの声とともに、戦っていた両方の選手たちがだきあって泣きました。泥まみれの顔でホオずりをしあいました。誰もの心の中に、ノーサイドという意味が、痛いほど分かっていたからです。戦争を終えた人たちだから、よけいにノーサイドの重みが分かっていたのです。もっと早く、ノーサイドの声がかかればよかった!みんなそう思いました。
ノーサイド、良い言葉ですね。



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