4月の法話集 ~自分を隠そうとすると疲れる~
この春高校を卒業して会社に就職したE子さんか、疲れた顔をしてやってきました。幼稚園のころから遊びに来ている子で、ときには親代わりにもなっているのです。話を聞いてみると、新しい職場で知り合った女子社員のなかには短期大学や四年制大学を出ている人がいて、その人たちと対等につき合うことがどれほど大変なことか、私のような高校卒業では、そのうちバカにされてしまうというのです。彼女は非常に成績がよく、大学進学を目指していたのですが、不幸にもお父さんが交通事故に遭い家計が苦しくなって断念したのでした。気丈夫なE子さんのことですから、他の人々に負けるものかと頑張っているのでしょう。きっと背伸びしているに違いありません。ときにはほんとうの自分を隠して、化粧した自分を見せているのかもしれません。だから疲れるのです。
かたくなになった若者の心を解きほぐすのはむずかしく、言葉を探したのですが・・・。
「まず、自分を隠そうとしないことだよ。ありのままの自分、背伸びしていない自分、化粧を落とした素顔の自分を見せてごらん。」
と申しました。するとE子さんは、「恥ずかしい……。」とひと言。
「恥ずかしいことなんかあるものか。高校卒業で結構じやないかー。お父さんが交通事故のため寝たきりで、家計を助けるために就職したんだ。立派なこと だ、だれに恥ずかしがることがあろう。堂々と生きなさい。自分を隠そうとするから疲れるのだ。いいかい、本物の自分を見せてやりなさい。私はこれだけです よ。だけど正真正銘の本物ですよってね。」
若いE子さんに語りながら、同じことがわが身にもありはしないかと問うてみました。あなたはいかがですか・・・・・・。
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