4月の法話集 ~過去を追わざれ、未来を願わざれ~


よく、お釈迦さまの教えはどのくらいあるのですか? と問う方がいますが、一目にハ万四千の法門と言われるくらいですから、計り知れません。お釈迦さまは三十五歳でおさとりをお開きになり、お亡くなりになる八十歳まで、多くの人々に教えをお説きになりましたが、その中にこんな教えを説かれています。
"過去を追わざれ。未来を願わざれ。およそ過ぎ去ったものは、すでに捨てられたのである。また未来は未だ到来していない。現在のことがらを、おのおのの所におりて、よく観察し、ゆらぐことなく、また動ずることなく、それを知った人は、その境地を増大せしめよ。ただ今日、まさに為すべきことを熱心になせ。誰か明日に死のあるを知ろう"
つまり、いつまでも自分の過去に犯したあやまちにかかずらわったり、絶えず未来の夢ばかりを追っかけたりするのではなく、現在を正しく見つめ、自分の持ち場をみきわめて、不動の覚悟で今を生きて行きなさいとのお示しです。 私たちはともすると、過去の小さな失敗を、いつまでもクヨクヨとわだかまりとして心に止めおいていることがあります。そのあげくノイローゼになる人さえ珍しくないというのです。反対に、未だ実現しない夢を見つづけて、足もとを忘れ、思わぬ失敗をする人も多くいます。
「過去を追わざれ、未来を願わざれ」
この言葉は厳しい言葉です。今日只今、今の今に徹して、充実した人生を歩みなさいとの一喝です。
今、今、今の積み重ねが人生です。その先に、まちがいなくやってくるものはなんでしょうか。



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