4月の法話集 ~先の世に借りたを返すか、今貸すか~
一休さんの話です。一休さんが山道を歩いていると、とつぜん大男が刀を抜いて立ちふさがりました。
「金をぜんぶおいて行け!」
一休さんはハイハイとばかり、お金どころか持っているもの全部、衣までぬいで、フンドシー枚になってしまいました。ものわかりが良い坊主だとニヤリとした男に対して一休さん、
先の世に借りたを返すか今貸すか
いずれ一度は報いあるべし
と一句をよんで聞かせたのです。
先の世に借りたを返すか今貸すか
いずれ一度は報いあるべし
今こうして取られるのは、前世で借りたものを返しているのかも知れないし、また、この人に貸しているのかも知れない。いずれにしても、一度はあることだと言うのですから、男もなんだか気昧悪くなってしまい、全部返したというのです。
私たちも日常生活の中で、やれ返してくれない、それ貸してくれない、と随分目くじら立ててやっていますが、この一休さんの歌のように考えれば、納得がいくというものです。取る方も取られた方も、借りた人も貸した人も実は同じ立場なんですね。共通の運命、これを仏教では共業(ぐうごう)といっています。一休さんのように、そう簡単にはいきませんよ、という声が上がりそうですが、これも日ごろの覚悟の問題でしょう。 一休さんもー朝一タにこうなったわけではありませんからね。
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