4月の法話集 ~コンピュータと人間の違い~


私たちの日常生活が、コンピュータとこれほど深く関わりを持つようになるとは思いませんでした。ずいぶんコンピュータのお世話になっているのですねえ。
岡潔先生といえば日本が誇る世界的な数学者でしたが、岡先生が文化勲章を、昭和天皇の前でおもらいになったときのことです。陛下が岡先生に問いかけられました。
「岡君、数学は計算が大変だろう。」
「陛下、ご心配くださいますな。計算はコンピュータにおまかせになったらよろしゅうございます。」
つづけて陛下がおたずねになりました。
「そうだ、コンピュータがあるのか。じやあ岡、数学って何だな?」
「陛下、計算はコンピュータにおまかせください。人間よりはるかに早くて間違いがありません。しかし、コンピュータのできないことがあるのです。それ は、出なかった答えを出なかったといってやめてしまわずに、答えが出るまでどこまでも苦労をつづけていくことです。それが数学の精神であります。」
この岡先生の言葉に、昭和天皇は深くうなずかれて、
「うーん、それはいい答えだ。」
とご満足になったとのことです。岡先生の言葉のなかに、どれほど便利なコンピュータでも、やはり人間とは違うということがはっきりと示されています。答えが出ないといってやめてしまうことなく、答えが出るまで一心に努力をする、それが人間であり、コンピュータにはできないことなのですね。
苦難に遭っても、それに立ち向かい、その解決のために努力を惜しまない。どこまでも苦労をつづけることができるのは、私たちが人間だからである、とコンピュータに教えられた思いがいたします。



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