5月の法話集 ~誰にでもできるお布施~


二十歳をこえたばかりの青年が激しい口調で問いかえしました。
「オレのようななんにも持っていない人間に施しなんてできるわけないよ。オレが恵んでもらいたいくらいだ!」
仏教のおしえである「布施」、つまり他の人々に施すことについて話している時のことでした。お金もない。人に分け与える物も持っていない。それなのに他人へ施しなんかできるわけがないというのでした。なんにも持っていない。財産がない。つまり無財。そこで「無財の七施」という教えがあります。費用も材料も資本もいらないで七つの施しができるというのです。
一つは捨身施といって、身をもってよい行いをすること。
二つは心慮施といい、他のために心を配り、共に喜び共に悲しみ、その幸せを願うこと。
三つに和顔施といい、いつも和やかな顔で接すること。
四つは、慈しみの眼ですべてを見る慈眼施。
五つには愛語施といい、他人の心をおもい、他人のためになるやさしい言葉、正しい話をすること。
六つには房舎施といい、風や雨つゆをしのぐ所をゆずってあげること。
そして最後七つには、座席を他にゆずってあげる床座施です。
さっきの青年が再び言いました。
「なあーんだ。これならオレだって、誰だってすぐにできますよ!」
さてみなさん、本当に、すぐにできるでしょうか。お金も、ものもいらないからといって、すぐにできるお布施でしょうか。無財の七施はたしかにお金や材料はかかりません。けれど、逆にどれほどのお金をつんでも買えないし、だいいち売り買いはできません。お金や物ではとても評価できない尊い、絶対の施しです。



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