5月の法話集 ~胸に一物、手に荷物~


「胸に一物、手に荷物」とか「彼は胸に一物ある男だ」などとよく言います。何か企んでいる人、なにを考えているかわからないヤツ、つまり油断のできない人間のことを指してよくこういう表現をします。ところが、同じ一物を持つにしてもこういう持ち方もあります。
「重い荷物は軽く持ち、軽い荷物は重く持て」
なにかさかさまの言い方のようです。重い物は重く、軽い荷物は軽いに決まっているのですが・・・。この言葉は、じつに苦しいことにぶつかつたときの心がまえを教えているのです。
困難なことにぶつかったときは、それでなくても心の負担が重くなり、苦しい苦しいで憂うつになりがちです。そうすると気持ちがどんどんせまくなって、困難を乗り越える知恵も生まれません。グッドアイディアというものは、心がのびのびして集中力が増したときに生まれます。
「今こんなにつらくても、そのうちトンネルを抜けるさ」
「どっちみち1歩1歩進むしかないのよ」
と覚悟を決めてくよくよしない、これが重い荷物を軽く持つ秘訣です。
反対に、こんな簡単なことと軽く考えると失敗します。ライオンはどんな小さな獲物をとるときでも全力を尽くす。これですね。 じつは、この「この重い荷物は云々・・・」は、修行の極意を言ったものです。同じ荷物でも「胸に一物」のほうは人をだまそうとし、反対にだまされまいとかまえてしまう。少しも心の温かい交わりがありません。一度しかない人生です。くよくよせずに、のびのびと生きましょう。



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