5月の法話集 ~踏まれなければだめになる~


子どもの日が近づくにつれ、考えることがあります。昨今の子どもの日は、子どもを楽しませる催事ばかりで、子どもたちの未来を親が真剣に討議したり、子どもたち自身に考えさせたりする集いが行われないということです。教育論は山ほどあるけれど、どう見ても、近ごろの子どもらは、ひ弱です。力強く、空に向かってピンと伸びている青い麦を見ていると、ああ、麦たちは霜ふる寒さの中でウンと踏まれたから、今、堂々と伸びているんだなと思わずにおれません。
農家の方に教えられました。
「麦だって、いつ踏むかが大切なんです。ヒョロヒョロ大きく育ってから踏んでも、踏んずけられたままで起きあがれません。ちょうどよい時に踏んでやる。すると雨風に耐えて起き上がり、強くなるんです。」
麦が土にはりついているとき、ギュッギュッと踏まれてこそ、強く根を張ることができるのだそうです。人の子も同じことが言えましょう。 子どもをほめることは大切です。けれど、ごきげんをとる必要はないでしよう。食事をしないので一生懸命、食べてくださいとお願いしているお母さん。勉強してもらうために、何でも買い与えるお父さん。そんな子はいつか、わずかなことで折れていってしまいます。人間は、幼い時に踏まれなければだめになってしまいます。子どもの日を前に、教育のあり方についてよく考えてみたいものです。



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