5月の法話集 ~子どもバンザイ~


五月の風にこいのぼりがおよいでいます。きっと、男の子が生まれて、初節句のお祝いでしょう。元気に、すくすくと育っている赤ん坊の姿が目に見えるようですね。平和な日本の情景です。
今から数年前の五月。私はカンボジア難民キャンプの中にいました。身も心も、戦争によって傷ついてしまった人々がただ、うつろな日々を送っているのでした。それでも、たった一つ、大きな救いがありました。それは"子どもたち"です。みんなはだしです。着ているものは、ホコリにまみれてまっ黒。いいえ、オチンチンまるだしの男の子もたくさんいます。着るものがないのですから仕方ありません。
けれど、その子たちは、大声をあげて遊んでいます。子どもは遊びの天才! 遊び道具なんてなんにもないのに、棒切れや、さびた針金や、草花や新聞紙をみ ごとにおもちゃにかえて大さわぎです。それを、シーツと放心状態で見ている大人たちの顔。子どもたちの笑顔と、生きる力を失ってしまった大人たちの顔を見 ながら考えさせられました。子どもって、なんてエネルギッシュなんだろう。なんて強い生命力を持っているのだろうって。
目の前でお父さんが殺される瞬間をみた少年。二人きりのお姉さんと別れ別れになった少女。たった二歳のよちよち歩きの女の子が、いつしか難民の群にまぎれこみ、赤十字の隊員に保護されるまでの数力月、ジャングルを歩き、川を渡り、彼女は生きて生きて……、 今、もう四歳になりました。目の前に明るい笑顔で遊んでいます。
私は叫ばずにおられませんでした。
「子どもバンザイ、子どもたちバンザイ!」
世界の大人の方々にお願いしたいのです。このすばらしい生命力を侍って、未来の社会を、世界を、地球を背負ってくれる、世界中の子どもたちに、いつでも平和をあげてください。この輝く生命力を本当に生かすことのできる世の中を残してあげてください。
五月五日は、子どもの日です。



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