5月の法話集 ~カメがウサギを追いこしていたら~


ウサギとカメが競争して、途中寝込んでしまったウサギがカメに負けてしまうという話は、さまざまな受け取り方があるようですね。日本では「油断大敵」という教訓になっていますし、イソップ物語では、たとえ遅くても着実にやっておれば必ず成功するのだとの教えになっているようです。
随分前に、ある保母さんのレポートを読んだことがあります。その保母さんが園児に質問をしました。
「ウサギが居眠りをしているのを見たら、カメさんはウサギさんをおこしてやって、いっしょに山へ行こうって言ったらいいのにねえ?」
すると子どもたちの間からワーッと反対の声がおこりました。
「いやや! そんなんウサギおこしてやったら損や。ウサギの横をそおっと通って、先に行かんと損や、損や!」 
さて、ある女性が、ソビエトヘ旅行したときのことです。小さな小学校を訪ねる機会があり、日本の童話を聞かせて欲しいとせがまれました。とっさのことで、ウサギとカメの話をしたのでした。すると、次々に子どもたちの手が上がって質問ぜめにあったのです。
「なぜ、カメはウサギをおこさないのか!」
「眠っているウサギをおこさないで、勝つなんて本当の勝ちではないのでは……。」などです。
「うさぎをおこすのは損や!」という子どもも「おこさないで勝ったことは本当の勝ちではない!」という子どもも、それぞれに日常生活の中にその判断をさせる何かがあるように思えてなりません。
ウサギとカメの話は、現実の大人の社会にはよくある話。その大人のもとで育つ子どもたちは、思ったまま、見たままを言っているのかもしれません。



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