5月の法話集 ~目ン玉と菜ッ葉とどっちが大事か~



食事がいつもおいしく食べられていますか。 ご馳走の味の良し悪しは健康のバロメーターと言います。 さて少しむずかしい言葉で恐縮ですが、次の文句を聞いてください。 「之(これ)を護惜(ごしゃく)すること眼晴(がんぜい)の如くせよ」  これは禅の言葉ですが、修行道場における食事当番の心得を示したものです。 「之」とは料理の材料のことを言い、護惜とは物を大切にすること、そして眼晴とは自分の目の玉のことです。  食べ物をつくる心得として、調理の材料を自分の目の玉ぐらいに大切にしないと、おいしい料理はできないぞ、と厳しく教えているのです。  良い料理をつくるコツは、まず材料を大切に扱う心を侍つことです。だから野菜の切れ端でもポイと捨てたりしません。たとえば椎茸でも昆布でも一番ダシ二番ダシを取り、それをさらに佃煮にするくらい大事にいたします。  どうかよく考えてみてください。  私たちが食物として目に入れるもので生命のなかった物が一つでもあるでしょうか。野菜、魚、肉、すべてみずみずしい生命を侍っていたものばかりです。私たちは三度三度、その生命を食べているのです。そのお蔭で生命を長らえることができているわけです。  日本が世界有数の長寿国といっても、みんなこうした多くの恵みに支えられたお蔭でしょう。  ここで私たちは恵まれたわが身の尊さに気づきます。  これに目覚めれば菜ッ葉一枚が、自分の目の玉と同じくらい大切であることがわかりましょう。  その感謝の心をしっかりと「いただきます」「ごちそうさま」の言葉に込めて、おいしくいただきましょう。



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