5月の法話集 ~若き修行者たち~


日本の仏教徒が、宗派や宗旨に関わりなく古来から行っているご修行の一つに四国八十八カ所札所巡りがありますね。いまごろ四国は、春になってさぞやお遍路さんでにぎわっていることでしょう。そうそう、昭和六十三年には本州と四国が瀬戸大橋で結ばれましたから、にぎわいも一段と増したことでしょう。
札所に当たるお寺のご住職にお聞きしたところ、何と近ごろでは若い方々もふえたそうです。それも歩いて巡っているというのです。
先日もご住職は車を運転中、雨のなかを黙々と歩いているお遍路さんを見かけました。そして「どうぞ乗りませんか」と声をかけました。見れば若い娘さんです。娘お遍路さんは涼しい声でいったそうです。
「ありがとうございます。でも、私の修行ですから、歩いてまいります。」
年齢を問うと恥ずかしげに「二十七歳」とのこと。ご住職は無事を祈って娘遍路さんと別れたそうです。
こんなこともあったそうです。若いお遍路さんが宿坊に泊まっているというので、札所のご住職は会いたくなりました。歳を聞くと二十四歳。社会人になる前に修行をしておこうと思ったからというのです。何と青年は、二千円以上のお金は絶対持たないことに決めているとのこと。お金がなくなったら家々の前に立ち、お経を読み、行乞(ぎょうこつ)をするというのですから、その覚悟には驚いたそうです。修行をしているんですね。
「こんな若人を見ていると、”近ごろの若いもんは根性が足りない”などといえませんよ。私たちこそ修行をせねばなりません。」とそのご住職はいっておいででしたが、ほんとうにそうですね。仏さまは”修行というものは特別なところにあるのではなく、日々の行いそのものが修行である”と教えられていますが、ときにはこの若人のような修行をしてみたいものですね。”



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