6月の法話集 ~時には静けさに身をおいて~


お寺で行われたある会社の新入社員研修会。その終わりに書いた受講者の感想文にこんなことが書いてありました。
「坐禅やなんかで静かにしている時間が割合に多かった。はじめはじっと静かに動かずにいるのが苦痛のように思ったけれど、だんだん清々しい気分を感じるようになった。やはり騒々しい、忙しい時ばかりででは駄目で、ときには静かに考えることが大事だと痛感した。」
この感想文は、坐禅など静寂の中に身をおいているうちに、心が次第に調っていくのを、うまく表しています。
まず正座をして背筋をぐーんと伸す。手を膝の上で軽く組んでアゴを引く。眼は静かに一メートルほど前に視線を落とします。鼻から胸一杯に息を大きく吸い込んでから、今度は口からゆっくりゆっくり静かに吐き出す。これをくり返しながら次第に呼吸を小さくしていき、数回ととのえた後は自然にまかすくらい静かに落ち着かせます。
こうして十分間でも二十分間でも座る習慣を身につけてごらんなさい。夜眠る前にやれば安眠が約束され、朝起きて坐ればさわやかな一日が待っています。
坐って心を落ち着かせることは、精神修養か健康法かと思うかもしれませんが、とてもそんな底の浅いことではありません。
二千五百年前、インドで仏教をお開きになったお釈迦さまは、じつは坐禅によって大宇宙の心理に気づかれたのです。静かに坐ることは人間の大変な知恵を引き出す力を持っているのです。今週は休日が多いちょうど良い機会です。静かに坐ってみませんか。



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