6月の法話集 ~老婆心~
道元禅師のお弟子に、懐奘(えじょう)さまという方がおられました。ある時、懐奘さまが道元禅師に申されます。
「なぜお師匠さまは、義价に印可(悟りを開いたという証明)をお与えにならないのですか?」
すると道元禅師が、
「あれは、才知技能にすぐれているけれど、老婆心が足りない。」とおっしゃいました。
続いて、懐奘さまにも、
「これから先にも、常に老婆心を心がけるよう。」
と申されたのでした。
老婆心-老いたおばあさんの心と書きますね。おばあさんは、長い人生経験を持っておられますから、とても、よく気がつきます。ときには、うるさがられる 程の相手への思いやりです。もちろん、おせっかいではありません。その人が人間らしく生きぬくためにさしのべる思いやりの手であり、言葉でなければなりま せん。老婆心は、ときに目に見えぬところで行われることもありましょう。
文字通りの、老いた、おばあさんだけの心では無論ありません。老若男女問わず、だれもが老婆心を持って人に接したいものです。
お嫁さんとお姑さんとのイザコザもお互いの老婆心で、ぜひ解決していただきたいものです。年寄りの話は古い、くどい、と言わずに老婆心から出た、おもいやりの言葉だと受けとめて耳かたむけて下さい。思わぬ知恵を得ることもしばしばです。
老婆心ながら・・・と前おきして話はじめるお年寄りがいらっしゃいます。年齢からにじみでるその一言一言は、相手のからだに、心に、しみわたって行くのですね。
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