6月の法話集 ~ひたすらに安らかな死を~
北海道のある方からお手紙をいただきました。六十歳を過ぎたご婦人です。
「主人がガンで亡くなりましてから、四十九日を過ぎました、主人が三度目の入院をしてお医者さまからガンで今度はむずかしいと言われました。
それから私はどうしても助からないものならば、せめて苦しまないで往生をしてほしいとばかり念じ、看護のかたわら一生懸命に『般若心経』をお写経しました。毎日必ず一巻はお写経しました。
入院後、六ヶ月目に入ると、とうとう流動食も喉を通らなくなりました。その夜は、すもう番組を聞いてから血圧が下がり始め、手足の先から冷たくなってき ても、怖いとも言わず、子どもたちに「仲よく、しっかりやっていけよ」と言うべきことは話をして、翌日の十時に息を引き取りました。
まるで嘘のように少しも苦しまず、先生や看護婦さんに不思議がられていました。
私はあのように安らかに死ねたことは、宗教のおかげさまだと思います。お写経のご功徳が信じられ、本当に有り難く、厚く御礼申し上げます。心の中に大きな穴があいたようで御礼が遅くなりました。」
諸行は無情なりと言いますが、このご婦人がご主人のガンに信仰の力で立ち向かわれたお姿は、たとえようもなく立派です。
お写経による信仰の世界があって、しかも『般若心経』功徳を底抜けに信じ続けられたために、初めて現れた尊いご利益であったと思います。
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