6月の法話集 ~ユーモアという名の教育~


『大地』や『郷土』などの不朽の名作を残しかパール・バックは貧しい家庭に育ちました。
お父さんは貧しい牧師さんで、子どもが七人。娘たちが年ごろになって、新しい服を欲しがるのですが、作ってやれません。
そんな時、パールのお母さんは悲しい顔などひとつもみせず、子どもたちを屋根裏につれて行きました。屋根裏には、大きなブリキの箱があって、使い古した帽子やリボンが入っています。お母さんが言います。
「さあ、みんなでパリヘ行って季節の帽子と洋服を買おう!」
この声と共に、パールたち七人の子どもたちは身ぶりよろしく屋根裏に登って行くのです。そして、パリの洋装店で買い物をしているシーンを演ずるのですが、事実、お母さんは、みごとな手さばきと創造力で新しい帽子を作り、娘たちに与えたのでした。
そこは、もう、本当にパリの街角のようだったと、パールは言っています。パールはやがて、実際にパリヘ出向き、帽子を買ったことがあります。しかし、あの屋根裏のパリで味わった興奮から比べると、その半分も味わうことができなかった、とも言っています。
お母さんのユーモアから生まれた"屋根裏のパリ"の体験は、パール・バックに、人生の中でユーモアがどれほど大切なものであるかを教えました。
苦しみに満ちたはずの人生を、一つのユーモアが百八十度転じて幸せの人生へと変えてくれることだってあるのです。人の暗い心の底から明るさをよびもどす力をユーモアは侍っています。



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