7月の法話集 ~ご夫婦は針と糸の関係~


理由は何であれお祝いごとにださせていただくのはうれしいものです。平和で幸せな気分にひたらせていただけます。語られるお祝いの言葉一つに一つに学ばせていただけます。
先日も七十五歳を越えられたご夫婦のお祝いにお呼びいただきました。戦後、家や家族を失った浮浪児のためにご夫婦で里親運動を始め、四十年もの間養護施設を開いておいでの方です。その苦難の道をお聞きすればするほど、お二人の熱意に打たれ涙を禁じ得ませんでしたが、ある方が祝辞のなかで「ご主人は針です。どれほど苦難の道でも突 き抜けて進まれました。そして奥様は糸です。針の突き抜けたあとを、まどうことなく横道にそれることなく、進まれました。誠にお二人はしっかりと結ばれた 針と糸のご関係です」と申されると、大きな拍手がわき起こりました。なかなか言い得て妙、心に残るお祝いの言葉でした。本当に世の中には、このお二人のように、針と糸のように結ばれ合って一筋の道を歩まれているご夫婦も多いことでしょう。
さて、祝宴の終わりに主役の一人であるご主人が、御礼の言葉のなかでユーモアをまじえて申されました。
「先ほど、私が針で家内が糸だとおっしゃっていただきましたが、その通りでございます。けれど針がいたから糸がついてこれたのでございますよ。」
この言葉には男性群から拍手が起こりました。つづいて奥さまが、
「針がいましたから、糸がついていったことはたしかですが、その針は目を離すとすぐにどこかへ行ってしまいますが、糸はいつまでも残ってほころびであれ何であれ守っております。」
この言葉には女性群から大拍手です。いずれも蘊蓄のある言葉です。苦労も喜びもともに歩まれたお二人の言葉はさわやかでした。



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