7月の法話集 ~捨てて生きよ~
先日、友人のお母さんが亡くなりお葬式に駆けつけました。そのとき、喪主である友人がしみじみ語っていましたが・・・。
「いやぁ。実にサッパリとして行ってしまいました。見てください。母の使っていた部屋です。なーんにもありません。いえ、何一つ残さないで旅立ったのです。母の晩年は、まさに捨てて捨てて、何もかも捨てきって生きようとしてましたね。」
詳しく聞いてみますと、七十歳で亡くなったお母さんは、身も心もできるかぎり軽くしたい、そのためには捨てることだ、あってもなくてもいいものはもちろ ん、人としてさわやかに生きることさえできればよいのであって、捨てきって生をまっとうしたい、そんな信念で生きてこられたとのことでした。
ご主人が残された財産は最低限必要な物を残して、そっくり老人ホームへ寄付し、子どもたちへも残しませんでした。形見になるようなものさえ何一つ残さ ず、葬式も何と知り合いの葬儀会社に最も安い費用でやって欲しいと、すでに支払い済みであったというのです。残されたお子さんたちは、これほどまでにしな くても・・・と少々お母さんをうらめしく思ったとのことでしたが、お母さんの捨てきる態度は、何も物ばかりを捨てたのではありませんでした。あらゆる執着 心をも捨てようとしたのですね。
後日、晩年からつけ始めた日記が見つかって、その中にこう書いてあったそうです。
”私はこの歳になるまで、何と多くの、どうでもよいものを背負って生きてきたのだろう。あれもほしいこれもほしいとむさぼり、そのたびに心痛め、手に入れ たと思ったら、また次の物がほしくなる。この歳になってわかった。ほんとうに必要なものはほんの少しで、あとは不必要。これからは捨てていこう。”
今の時代に考えさせられる生き方ですね。
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