7月の法話集 ~定時定点必着~


停年退職をしたKさんが、この四月に再就職した会社でちょっとした評判になっているんです。
「とにかくKさんは時計のように正確だ。必ず時間は守る。お得意さんへ商品を運んでもらうと、一度も遅れたことがない。場所をまちがうこともない。なぜ、こんなに正確なのか、その秘訣を聞いてみようじゃないか!」ということになったんです。
Kさんは少々困りました。Kさんにとってみれば当たりまえのことを、当たりまえにやっていたからです。
とうとう、ある日の朝礼で、話さねばならないことになってしまいました。目べたのKさんが汗をかきかき語ったことは……。
「私は戦争中、飛行機に乗っていました。戦闘機に乗って出て行った戦友で帰ってこない奴ばかりの中、こうして生かされているんです。
飛行機に乗っていて、絶対に守らねばならないことがあります。それは定時定点必着ということです。定められた時間に、定められた地点へ、必ず着く、定時定点必着といいます。次々に空へ向かって飛びたつわけですが、大空のある一点へ、決められた時間に必ずつかねばならんのです。そこで編隊をくんで目的地へ向かうのですから。
このことが身にしみておりますから、今でも、人と約束したり、物を届けるなどの時、定時定点必着と自分に言いきかせ、実行するだけのことなんですよ。」
話し終わったKさんへ大きな拍手が送られました。この日から、会社のあちこちに、定時定点必着というポスターが張られて、全社員で実行されるようになったそうです。



7月の法話集一覧表へ戻る