7月の法話集 ~一服のお茶~


長野県塩尻の尼僧寺で毎年行われる夏の研修会はとても人気があり、いつも満員です。その秘密は、一服のお茶をいただく時間にあることがわかりました。
さわやかな朝。大きな樹の下に整えられた"野だて"のお茶席。尼僧さまがたててくださる抹茶をいただく醍醐味が、参加者の身も心も洗っていくのです。日ごろ、あれこれと思い悩んだり、仕事に追われて生きることへの自信をなくしたり、さまざまな思いを持って集う人々の研修会ですが、自然のなかでいただく一服のお茶が、明日からの人生を生き抜くための心の良薬になっているようです。
お寺では、お参りに来られた方々、用事で来られた方々に、よくお茶が出されます。
昔からお茶の効用として、心を鎖めるといわれますが、ほんとうに一服のお茶をいただくとホッとします。つまり心に安らぎが生まれます。仏教の言葉にも、"喫茶去(きつさこ)"というのがあります。"去"は強める助辞ですから、"どうぞお茶を召し上がれ"ということになりましょう。
何かのことで気持ちが荒立ち、言葉もすさんだ人と対面したとき、言葉に言葉をもって対しても何ら効果はありません。もし、こんな場に出くわしたら、ぜ ひ、「まあ、一服のお茶を召し上がれ」 との余裕を見せて対話を進めてはいかがでしょう。そのとき大切なことは、出がらし茶をボンと出すのではなく、心をこめ、ゆっくりと、あなた自身が人れたお茶でなければなりません。



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