7月の法話集 ~あなたが拝めば仏さま~


小さな木彫りの観音さまを持ってSさんが来ました。
「これ、あずかってください。どうも息子と考えが合わなくて、仏さまに申しわけないものですから……。」
なかなか立派な木像の観音さまです。この観音さまのことで少々Sさんの家庭内がもめました。Sさんは観音さまを求めて家に帰り、床の間に安置して家族に宣言したのでした。
「今日から、観音さまをおまつりすることにした。朝起きたら家族で手を合わす。何か心配ごとがあったら、一心にお願いしろ。」
こう宣言したところ、子どもたちから不満の声があがり、とりわけ長男は大反対。
「お父さん、こんなもの仏さんじゃないよ。ただの木像、強いていうなら美術品だ。手を合わせて拝んだって何にもならないよ。」
いわれてみればその通り、木彫りの美術品には違いないのですから、Sさんにも反論できませんでした。それどころかSさん自身が、何だか不安になったのです。
”息子のいう通り、美術品かもしれない。仏さまではないかもしれない・・・・・”
そこで、こんな気持ちでは仏さまに申しわけないと思い、とりあえずお寺へ、と持ってきたとのことでした。即座に申しました。
「この観音さまは立派な仏さまです。Sさんの仏さまです。なぜなら、あなたが観音さまを拝めば、仏さまなのです。美術品として見る息子さんにとっては仏さまではない。木像の仏さまであろうが、金仏であろうが、写真であろうが、拝めば仏さまなのです。迷うことはありません。あなたの仏さまです。心をこめて拝んでください。」
Sさんの安心した顔を見て、一緒に開眼供養のお経をあげたことでした。



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