7月の法話集 ~人みなに美しき種あり~
長時間車に乗っていると、必ずといっていいほど交通事故現場に花がお供えされているのを見かけます。車がなくては何もかもが止まってしまうという現代の車社会ですから、交通事故も起こりましょうが、事故で亡くなった方はお気の毒です。
先日も、登校途中の小学生の列に小型トラックが突っ込み、六人のお子さんが亡くなったという事故現場にお参りしましたが、新しい六つのお地蔵さまが並び、多くの花束、お菓子、そしてお線香がお供えされて、まるで昨日のことのように痛ましく思われました。お参りに来た土地の方がふと申されました。
「だれ彼なくお参りしていくんですよ。この間は大きなダンプカーの運転手さんが、どっさり花束を持ってきて水をかけているから、身内の方ですかとたずねたら、ときどきこの道を通るだけの遠い町の人なんですね。何てやさしい人だろうと思いました。ほんとうはだれもが事故なんて起こしたくない。それどころか、自分とは関わりのないお地蔵さまに花をお供えする美しい心を持っている。それが人間なんです。だからほんの少し気をつければ、どれほど交通事故が減ることでしょうね。」
ほんとうにこの方の申される通りですね。同じ人間のなかに車を殺人の凶器にしてしまう心と、見知らぬ人のご供養にと花をささげる美しい心が住んでいるのですね。できることなら、いいえ何としても、花をささげて手を合わすことのできる美しい心をいつも先にして生きていきたいものです。
仏さまは、〝人みなに美しき種あり″と教えられています。あなたのなかに、必ず花開き実を結ぶ種が宿っています。このことを仏さまは少しの疑いもなく信じてくださっています。あとはあなたがそれを信じさえすれば、美しき種が芽を吹くのに時間はかかりません。
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