7月の法話集 ~林のなかにいる象のように~
先日、周囲から暴走族と呼ばれ、自らもそれを認めている若者に会いました。
「オートバイってそれほどおもしろい?」
と問いかけますと、ちょっと意外な答えが返ってきたのです。
「まあオートバイも好きだけど、多くの仲間と一緒にいるのがいいんすよ。つまりレンタイ、連帯ですよ。あいつもこいつも、オレとおんなじ考え持っていて、気が合う奴ばかりのはずだという連帯感がたまんないんすよ!」
なるほど、うなずけますね。連帯感が快いのは何も彼らだけではなく、私たち大人でも同じです。さて再び問いました。
「連帯の仲間たちのなかで、心の底から信頼できて、いつどんなときでも助け合える友人がいるかね。社会迷惑な暴走はやめようじゃないかと君を誘う友だちはいるのかね。いま君に必要なのはそういう友だちだと思うがね。」
しばらく考えてから彼はボソッといいました。
「いねえよな。第一住所も名前も、ほんとうのところ知らないしなあ・・・」
ふと彼の顔にさびしさを見ました。そして、お釈迦さまの言葉を思い出したのです。
”愚かな者を道伴(みちず)れとすることなかれ。独りで行くほうがよい。孤独で歩め。悪いことをするな。求めるところは少なくあれ。---林のなかにいる象のように”
つい仲間を求め、連帯感の快さに酔いしれるのは何も暴走族といわれる若者だけではありません。連帯もときには必要なことです。ただいざというとき、林のなかにいる象のように、孤独で歩むことのできる自分を養っておく必要があるのですね。
7月の法話集一覧表へ戻る