8月の法話集 ~はだかにて生まれてきたに何不足~
"はだかにて生まれてきたに何不足"
これは、俳人小林一茶の句です。生涯、赤貧に甘んじて俳句をつくり続けた一茶らしい句です。ともすると、あまりの貧しさにわが身がなさけなく悲しくなったのでしょうか。そこで自分白身に向かって「なあーに、生まれた時はハダカだったじやないか。今さら何を不足を言うのだ」と自分白身をしかりつけた句のようにも思えます。
"やれ打つな繩が手をする足をする"
"雀の子そこのけそこのけお馬が通る"
こんな心やさしい句をつくった一茶ですが、一面どんなに貧しくてもくじけず、ただ一途に俳句を作り続けた強い精神力の持ち主だったのですね。小学生も中学生も一茶のことを学校で学びます。
開くところによると、どこの学校も忘れ物が山のようにあって、持ち主があるはずなのに誰も取りに来ないそうです。失くなったら買えばいい。すぐ買ってくれる。まだ十分に使えるのに新しい物を買う。小林一茶がこれを知ったらなんと言うでしょう。小学生ばかりではなく、私たち大人も同じですね。欲しい物が手に入ると、すぐに次の物が欲しくなります。
次から次へと、いつ止むとも知れないのが物欲です。小林一茶はなぜ赤貧に甘んじたのでしょうか。
それは、次から次へと生まれてくる欲望を追いかけっこをしていて、本来の道、俳句づくりの道からはずれてしまうことを恐れたのだと思います。
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