8月の法話集 ~沈みいく太陽と登る月に~


秋のおとずれと共に空気がすみ、遠くの景色がはっきりと見えるようになりました。とりわけ西の空に沈み行く太陽の輪がくっきりと、そして夜空に登りくる月は、その時々の姿をさわやかに見せてくれます。山村暮鳥が詩っています。

ああ もったいなし もったいなし
この手は どちらにあわせたものか
いま 日がはいる
うしろには 月が出ている

沈み行く太陽と登る月のどちらに手を合わせようかと、暮鳥は困っています。困ってしまうくらい、美しく、そしてありがたく感動的な日没と月の出なのでしょう。
お年寄りが。"おてんとうさま"という言い方をされますね。また、近年ではみられなくなりましたが、夕方沈み行く太陽に向かってじっと手を合わせて析るおばあさんの姿をよく見かけたものです。今日の無事を感謝し、明日の幸せを祈る清らかな姿でした。
野球評論家の金田正一さんは、子どものころからずーっと今日まで、朝夕、太陽に向かって手を合わせて拝んでいます。「おてんとうさまのおかげで生きて行けるんや」と金田さんに教えたのはお母さんでした。
科学の力によって太陽の分析が行われた今日、太陽を拝むなんてバカバカしい!と笑う人もいるでしょう。けれど、正月には初日を、登山をすれば御来光を拝みます。おだんごをお供えする月見の行事もまだ行われています。どれほど科学万能の世になっても、大きな自然の恩恵に手を合わせる謙虚さを忘れないでいたいものです。



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