8月の法話集 ~極楽へは行かれません~
福岡県糸島郡にお住まいの今年八十九歳になるおばあちゃんのお話です。
おばあちゃんは人に合うと、こんなことを語っています。
「あたしの数珠、これ私がずっと持っとります。お数珠はもう離されまっせん。これがお蔭で生かしてもろうとります。もう、うれしいばっかりでございます。そっから助けてもらい、こっから助けてもらいしながら……。」
おばあちゃんのご主人はもう亡くなりました。病気で亡くなる三日前のこと。ご主人はおばあちゃんに言いました。
「このまま死ねば極楽にまいられようかえ。」
すると、おばあちゃんは一言、
「極楽へは行かれません。」
まもなく死出の旅路に向かう人に対して「極楽へは行かれません」というのは、きついことばですねえ。ご主人はびっくりして問い返しました。するとおばあちゃん。
「人をだましたことや悪いことをした覚えはないと言っても、仏さまがごらんになったら嘘ばっかりでしょ。今夜と明日でじっくり考えて、おじいさんが懺悔する気になったら教えてください。二人で懺悔しましょう。そうすれば極楽へまいられます。」
それから三日目の朝、ご主人はおばあちゃんをよんで言いました。
「そうやったわ。そうやったね。」
おばあちゃんはご主人をお仏壇の前にすわらせて共にお経をあげたそうです。
ご主人の最後の言葉は、「もう仏さまが帳面消してしまわれたけん、喜んでまいろう」でした。おばあちゃんは言います。
「さんげしてまいりゃあ、仏さまの許してくださるけんなあ。そこまでいかにゃあ、いかんばな。」
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