8月の法話集 ~お地蔵さまに導かれる~


いまから数年前のことです。千葉県の房総半島の山あいの町で悲しいことが起こりました。夏休みを明日にひかえて通学する小学生の列に、若者の運転する乗 用車が暴走して、五人もの幼い命が失われたのでした。そこはちょうど峠になっていて、いまでは冥福を祈るお地蔵さまがおまつりされ、お花やお線香をささげ る人はとぎれることがありません。
お地蔵さまに導かれて、幼い生命が安らぎの世界に生まれてほしいとの多くの人々の願いがその峠には満ちています。思えば導いてくださるのはなぜお地蔵さ まなのでしょう。お釈迦さまがお説きになった『地蔵菩薩本願経』というお経があるのですが、そのなかでこう示されています。
"はやく父、母に別れたもの、亡くなってどこにいるか行方のわからぬものがあった場合、兄弟姉妹や親しいもの、またその子とは無縁の人々であっても、お 地蔵さまのお像をつくったり、お姿を絵にかいたりしてそれを礼拝し、三七、二十一日の間、お地蔵さまのお名前を念じお唱えすれば、お地蔵さまがどこにでも 姿を現して、その場所を示し助けてくださり、その気持ちを長く失わなければ清らかな世界にお連れくださるのだよ"
このみ教えによって、古来からこの世を旅立った幼児のお導きを、お地蔵さまにお願いするようになったのです。
そういえば、八月二十三日ごろに地蔵盆という行事を行う地方がありますが、その時期が近づくと村はずれの地蔵堂やお寺の六地蔵さまのお掃除やおまつりは、子どもたちの役目になっているところが多いようです。多くの仏さまがおいでになるなかで、ずいぶん身近に思えるお地蔵さま。どうぞ、お地蔵さまにお会いになったら、一本のお線香、一輪のお花をお供えして念じてください。"急ぎ旅立っていった幼児を、どうぞ安らぎの世界にお導きくださいますように"と。



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