9月の法話集 ~彼岸へ渡る日々の行い~
学生さんから質問を受けました。
「お坊さん、彼岸というのは仏の世界の意味で、われわれがこの汚れた岸から、彼岸、つまり向こう岸の仏の世界へ渡るという意味らしいですね。」
「よくご存じです。その通りです。」
「では、どうすれば渡れるか教えてください。」
さて、私は次のように答えました。
「仏さまが教えてくださった八つの正しい道を日々行ってくだされば渡ることが出来ます。
一、正しいものの見方を身につける。二、正しい考えをする。三、正しい言葉づかいをする。四、正しい行動をする。五、正しい生活をする。六、正しい努力をする。七、仏さまの教えを忘れない。八、つねに心静かに自分を見つめる。
この八つの正しい道を実践しておれば、間違いなく彼岸へ渡れますよ。」
すると学生さん、
「なあんだ、当たり前のことを、当たり前にやっていればいいってことじゃないですか。」
「よく気づかれた、その通り。当たり前のことを当たり前にやっていればいい、それが仏さまの教えです。彼岸への近道です。」
そういいながら、一つのリンゴを半分にして学生さんに渡し、半分を私がいただきました。
「学生さん、なぜリンゴの半分を差し上げたかおわかりか?」
「そりゃあ、一人で食べるのは悪いと思ったからでしょう。」
「いやいや、一つのリンゴを二人でいただいた方がおいしいし幸せだからです。このような考え方、行いが、彼岸へ渡る道にかなっているのですよ。」
私たち二人は、一つのリンゴをおいしくいただいたことでした。
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