9月の法話集 ~『父母恩重経(ぶもおんじゅうきょう)』を学ぶ~
お釈迦さまがこんなことを申されています。
”どれほど自分のそばにいる人でも、恩を知らない人は千里も万里も離れた、ずっと遠いところの人である。恩を知っている人は、たとえ遠く離れたところにい る人でも、自分のそばにいてくれる人である”、このお言葉通り、仏教は恩ということをとても大切なことだと教えている宗教なのです。
さてこの恩について、懇切丁寧に説き示しているお経に『父母恩重経』があります。名前の通り、お父さんお母さんの恩を説いたお経ですが、中身はお父さんで 説かれているところ十一カ所、お母さんで説かれているところが三十三カ所あるのです。やはりお母さんの方が多いのですね。たとえば、子どもを産むときのお 母さんの苦労は命がけであると書かれています。
どなたの作か知りませんが、こんな和歌がありました。
”諸人よ思ひ知れかし己が身の 誕生の日は母苦難の日”
父母の看病についても示されています。
「父母病あらば、牀辺(しょうへん)を離れず親しく自ら看護せよ。一切の事之れを他人に委ぬること勿れ。時を計り、便を伺いて、懇(ねんごろ)に粥米(しゅくはん)を勧めよ」
”お父さんお母さんが病気になられたら、病床を離れず、自分で看護しなさい。すべてのことを他人まかせてはいけない。時間を見ながら大・小便のお世話を し、やさしく心をこめておかゆのご飯を差し上げなさい”と具体的に示されています。これはお釈迦さまが、七十九歳まで生きられたご自分のお父さまになさったそのままを示されているのですね。
恩というのはインドの古い言葉で”カカンニュウ”といい、”してもらったことを覚えている。してもらったことを思い出す”との意味なのです。私たちは、”されたことは覚えていない、してあげたことは覚えている”ということになりがちです。『父母恩重経』、一度味わってみてください。
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