9月の法話集 ~お釈迦さまと遊女~
お釈迦さまが最も嫌われたのは人間を差別することでした。
あるときお釈迦さまは、アームラパーリーという美しい女性から食事の招待を申し出られます。実はアームラパーリーは遊女だったのです。彼女は国や一族でも、 一,二を争うほどの美しい女性で、一夜宴会に出ると莫大な報酬が支払われたらしく、遊女といえども大金持ちでした。
遊女アームラパーリーは、お釈迦さまの説法を聞き、あまりの喜びにその翌日、お釈迦さまとお弟子をお招きして食事の供養をさせていただきたいと申し出たのでした。この申し出をお釈迦さまはお喜びになり、遊女の家へ出向くことを約束されるのです。
ところが同じ町に住む貴族たちが、次々に食事供養を申し出ました。多くの人々は遊女の申し出はことわって貴族の供養をお受けになった方がいいのにとか、何も遊女の供養をお受けになることもないのに・・・とか口々にいいました。けれどお釈迦さまはきっぱりと申されます。
「私はアームラパーリーと約束をした。」
お釈迦さまの眼には、貴族も遊女も平等に映っていたに違いありません。
翌日、アームラパーリーの家に出向かれたお釈迦さまとお弟子たちに、十分なもてなしを終えた彼女は、自分の持っているマンゴー果樹園を寄付させていただきますと申し出たのでした。この日から遊女アームラパーリーは、ますますお釈迦さまを敬って、とうとうたった一人の息子をお釈迦さまのお弟子として出家させたのです。
すでにカーストという厳しい差別が行われていたインド社会にあって、お釈迦さまの遊女アームラパーリーに対するお心は、彼女にとってどれほどうれしかったことでしょう。お釈迦さまは、ゼッタイに人間の差別はあってはならないと教えられています。
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