9月の法話集 ~一期一会~


友だちとの別れぎわのあいさつも最近は変わりましたね。
「じゃあねえー」「バイバイ」「またね」
まったくさらさらしているというか、軽いというか、"またいつか会える、なあに明日もまた会えるんだから"という気持ちが、知らず知らずの内に、こんなあいさつになるんでしょうね。それはそれで良いと思います。
千利休は『茶湯一会集』という本の中で、
「そもそも茶の交会は、一期一会といいて、たとえば幾たびおなじ主客と交会するも、今日の会に再びかえらざることを思えば、実にわれ一世一度の会なり」
と言っています。
同じ人と度々会っているけれど、一度一度が二度と返ることのない、わが人生においてたったー度きりの出会いなんだと言うんです。これは千利休が他人に向かって言っているのではなく、自分に言いきかせている言葉なんですね。いわば、逃げることのできない死に直面した時、明日また会えますね、とはもう言えないわけです。このことを日々の生活の中で心にとめていれば、そう簡単にバイバイとは、言いにくくなるともいえましょう。
つまり、いいかげんな出会い方、交わり方はできない。この出会いはこれー度きり、もう二度と返ってこないんだぞと思えば、自ずからそこには、真剣味があり、相手への思いやりが生まれましょう。そして一期一会の心をさらに問いかけていきますと、真実の教え、仏さまの教えに出会えるのも今をおいてはない。ただただこのー回しかない今日ただ今、真実に目覚めなくてどうするんですか、という大きな宿題に出会うんです。



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