10月の法話集 ~和顔愛語~


”思い内にあれば色外にあらわる”という言葉があります。心の動きは、そのまま顔に表れるものですね。もの悲しいときは、おのずから暗く沈んだ顔になり、怒り心頭に発するときは忿怒の相となり、心楽しいときは明るい顔となります。顔の表情にもいろいろあるものですね。そんな多彩な表情の中でも、やはりいつも和やかな顔でありたいものです。
この和やかな顔、すなわち和顔(わげん)を保つには、言葉づかいが大切であると思います。腹の虫をおさえて言葉をやわらげるなど、私たちの表情にはきわめて不自然な場合が多いようですが、もう少し自然でありたいものです。
自然がよいといっても、遠慮なしに思ったことをずけずけいうのも困りますね。極端に表裏がありすぎたのでは、円満に交際することはできません。言葉には愛情がこめられていなければなりません。それを愛語と申し上げます。
愛語とは心の底から起こるものであり、いつもそれを心がけたいものです。お母さんが赤ん坊を愛するような心を持って、やさしい言葉を発するのです。かわいくてかわいくていても立ってもおれない、親の子に対する愛こそは自然の愛であり、無心の愛であり、この上ない貴い愛です。この愛はみ仏の心のよう な慈悲から発するのです。”愛語は愛心より発する、愛心は慈心(いつくしみの心)を種(もと)とせり”というお言葉もあります。家族の間にもこの愛心から 発する愛語が聞こえ、和やかな顔の和顔が見えるとき、明るい家庭が築かれ、いつくしみに満ちた生活が送られることでしょう。



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