10月の法話集 ~分け合えば足りる~
この夏、ある中学校の野球部が、お寺を借りて合宿練習をしたときの話です。
一日の練習を終えて待ちに待った夕食の時間がきました。食べ盛りの年齢の運動選手ですから、もうお腹はペコペコです。一分でも早く食べたい彼らに突然問題が生じました。
昨日まで休んでいた部員三名が、今夜から参加することになり みんなと合流してきたのです。当然のことながら、三人の夕食はありません。山のなかのお寺ゆえ、外へ食べに行くこともできずさて困りました。キャプテン がみんなに意見を聞くとケンケンガクガク、
「あとから来た奴は、ガマンしろ。」
「夕食前に来るなんて非常識だ!」
「三人はガマンガマン、ガマンしろ。」
そのとき、B君が提案しました。
「三人分、お坊さんにもらえばいいじゃない。キャプテンお願いしてください。」
これはよい方法といわんばかりに拍手に送られてキャプテンがお坊さんに会いました。
ところがお坊さん、大声でいいました。
「やらん、絶対にやらんぞ!ご飯一粒もやらんぞ!それに、あとから来た三人にガマンさせて自分たちだけ食べるような野球部なら、明日から合宿おことわりだ!第一そんな野球部が試合に勝てるもんか!さあ、どうする!」
キャプテンの報告を聞いた野球部貝たちは、ガッカリしてシーンとしています。ボソッとE君がいいました。
「分け合えば足りるんじゃないかなあ。」
このひと言に野球部貝の目が輝きました。
「そうだ、みんなの分を少しずつ分け合えば、三人分ぐらいすぐにできるじゃないか。こんな簡単なこと、どうして気づかなかったのかなあ……。」
この日の夕食は格別の味がしました。
彼らが発見した”分け合えば足りる”という精神に学びたいですね。
10月の法話集一覧表へ戻る