10月の法話集 ~あと一歩踏み出せ~
世界一速い男、と言ったら誰でしょう。それは陸上競技の百メートルの走者のナンバーワンを諮うのでしょうね。そうです。アメリカのカール・ルイスです。ロスアンゼルスのオリンピックで数々の金メダルを取った彼に、興味深いエピソードがあります。
それはこうです。カール・ルイスは走り幅跳びの世界記録を持っていますが、彼は跳ぶ直前になると、踏み切り板からちょうど五歩手前のところの横に、目印になるものを置きます。
彼は以前、踏み切りの直前にくると、何か躊躇してしまい、どうしても踏み切りができません。あと一歩が出ないのです。長い問、記録が伸びませんでした。苦しんだあげく、彼はコーチと相談して、自分の体を徹底的に調べることにしました。
呼吸、脈はく、筋力などを、何百通りもの変化を調ぺました。そのために彼は一万回以上も走り続けました。
そうして、走り幅跳びの踏み切り板の手前、五歩のところを目印にすれば、タイミングが合うことを発見したのでした。記録はまた伸び始めました。
力-ル・ルイスのジャンプは、徹底した研究と血のにじむ努力の結果に得たものだから、間違いないという、すごい自信に裏打ちされた走り幅跳びに成長しました。
何万人もの大観衆の中で、ものすごいプレッシャーの中で、いつも最高の力を出す。これは並大抵のことではありません。緻密な計算による猛訓練と、必ず勝ってみせるという不屈の精神が重なり合って、超人ルイスがあります。
最後の栄光を夢みて、どんな苦労にも耐える、決して退くことをしない勇気が、最後の一歩、ゴールを踏むのです。
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