10月の法話集 ~披露の意味は~


秋。結婚式が多い季節です。結婚式といえば披露宴がつきものですね。
披露の"披"は、開くこと、"露"とはあらわにすること。二つの文字を続けると、開いてあらわにすることですから、何から何まで見せてしまうということになりますね。では、何を披露するのかというと……。 
中国に、腹心を披露する、つまり、はらごころを披露するとか、肝胆を披露する、つまり、心臓や胃を披露するという言葉がありますが、この腹心とか肝胆とは、まごころのことです。人間のまごころを披露することなのですね。
思えば結婚ということは、つい昨日まで、生まれも育ちも、考え方も違う男女が、今日からは毎日、同じ日常生活に取り組むということですから、なかなか両者の思うように行かないことも多々あることでしょう。そこで、大切なことが、腹心を披露する、肝胆を披露するという精神ということになるわけです。
披露宴では、新郎新婦の、今日までの経歴が、仲人さんによって披露されます。友人や上司によって、それぞれの人柄が披露されます。時に笑いあり、時に涙ありの披露宴です。そして、いよいよ二人だけの道行きが始まります。お互いのまごころを披露し合っての、二人三脚です。
時とともに、お互いのまごころは、黙っていても通じ合えるようになるにちがいありません。もう、お互いに、お互いの腹心も肝胆もすっかリ披露してしまったからです。そこには、信頼のきずながあるのみです。
秋のひだまりの中、
"向かい合って言うこともなし 柿をむく"
こんな俳句の似合う、二人になっていることでしょう。



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