10月の法話集 ~仏は"ほどくこと"につながる~
昔からこんな言葉があります。"仏、ほっとけ、神、かまうな"。これは、"心配するな" "何とかなる"と、かまわず放っておくことが、だんだん自然に、あるべきところ、もとのところに落ち着きますよと昔の人々が教えた格言でしょう。
また、"仏はほどくことにつながる"ともいわれます。たしかに悩みや苦しみのもとを、もつれた糸をほどくように解決すると安らぎが生まれるわけですから、仏はほどくにつながるという意味もうなずけます。
昔、仙厓(せんがい)というお坊さんが町を通りかかると人だかりがしています。のぞいてみると、すさまじい夫婦げんかの真っ最中です。
「さあ、殺せ!」「よし、殺してやる。」
これを見た仙厓さんは一番前に出て見物をしながら声をかけます。
「おもしろい! もっとやれ、死んだらわしが引導を渡してやる。さあやれやれ!」
この声に夫婦はすっかり意気をそがれ、すごすごと家へ入ってしまいました。
仙厓さんがこんがらがった夫婦の絆を解きほぐしたのですね。仙厓さんという仏さまによってほどかれたわけです。仙厓さんは、ほどき方をちゃんと心得ていたのでしょう。
私たちは日ごろさまざまな人間関係の上に生活しています。そして人と人との関係が、複雑にからみ合ってもつれてしまうことがしばしばあります。しかし、 ほどき方のこつを知っているならば、つまり仏心(ほとけごころ)を持って解いていくならば、どれほどもつれた糸をも、人間関係をも解くことができるはずな のです。そういえばさきほどの仙厓さん、こんな歌を残しています。
富士の白雪朝日でとける/今朝の雑煮は煮てとける/夫婦喧嘩は寝てとける
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