11月の法話集 ~六方礼の教え~


古いお経のなかに「六方礼(ろっぽうらい)」という、お釈迦さまの教えが示されています。
お釈迦さまは説法の道すがら、一心に水浴びをしている若者に出会われます。あまり熱心なので聞いてみると若者が申しました。
「私は父の遺言によって毎朝水浴びをして、東、西、南、北、上、下の六つの方角においでになる神様に礼拝しているのです。」
青年は東西南北上下、六つの方角に神様がいると信じて、毎朝水浴びをつづけているのでした。そこでお釈迦さまは申されます。
「若者よ、本当の六方礼を教えてあげよう、六方礼というのは、この世にともに生きるもの同士が心から尊敬し合うことなのだよ。  父と母が、夫と妻がお互いを理解し合って尊敬し合う。親と子が尊敬し合う。そして先生とお弟子が、ともに働く主人と使用人が、それから友だち同士が尊敬し合って、互いを拝み合うようになることをいうのだよ。このようにすれば、お互いに住みよい世界をつくることができるというものだ。」
この教えを聞いた若者は、まず今日の日まで育ててくれたお父さん、お母さんを敬うことから始めたといわれます。
お坊さん同士の挨拶は、手を合わせて深く頭を下げ、お互いに礼拝をします。拝み合うのです。
”人人礼拝(にんにんらいはい)”という言葉があります。人と人同士が手を合わせて礼拝し合う。手を合わせて礼拝し合えばけんかはできませんね。
どうぞ六方礼の教えに基づいて、相互で尊敬し合う心をお持ち下さい。



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