11月の法話集 ~けしの実~


ケシの花を知っていますか。東南アジアでつくられ、主に白い可愛らしい花をつけますが、一日でしぼんでしまう、はかない花です。このケシは花より実のほうが有名です。そうです。ケシの実から麻薬のアヘンが採れるからです。アヘンは病気の痛みをやわらげる鎮痛剤や睡眠薬として、医療にはなくてはならない大切な薬です。しかし、ご存知のとおり、アヘンを勝手に吸ったり飲んだりすると、恐しい中毒となり、ついには人間として廃人となってしまいます、とても恐しい麻薬です。
このように植物のケシは、美しい花と強い毒をもっています。しかし、その毒は、また良い薬にもなります。こうして、毒を薬にかえることを発見したのは、私たち人間のすぐれた知恵のおかげです。
ところが、一つのいのちの中に美しい花と毒を持っているのは、何もケシだけではありません。人間だって同じです。毎日起こっているひどい事件をみても、学校のいじめなども、人間はもともと悪人なんだろうか、と思うほどです。
しかし、それは違うのです。お釈迦さまは、はっきり言っています。
「人間はもともと美しい種をもっている。しかし油断すると汚れがすぐついてしまう。だからいつも努力して自分を磨こう。」
毒にするのもよい薬として使うのも、自分のコントロールの力です。悪い誘惑ほどおいしく見えるものです。強い意志によって押さえる力、これがほんとうの知恵なのです。
次のお釈迦さまの言葉をよく昧わってください。
己こそ己の依るべ、己をおきて何の依るべぞ、よく整えし己こそ、真の依るべ。



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