12月の法話集 ~何の事業も皆仏行なり~


ある建設会社の社訓に、次のようなことが書いてありました。それは、
”何の事業も皆仏行なり”というのです。
若い新入社員は、初め、この言葉を聞かされてとまどうそうです。
「営利を求める企業なのだから、時には他を蹴落としても競争に勝たなければならない」と教える会社の多い中”どんな仕事も、仏さまの教えにかなった行いであれ”というのですから、普通、とまどうのが当然でしょう。
初代社長のころ、競争が激しくて、裏で取引をするものや、多額のお金を渡して仕事を取る業者などで入り乱れていたのでした。社長も業績を上げるために、どれほど同じことをしようと思ったか知れません。その思いに歯止めをかけたのが、年老いたお母さんの言葉だったのです。
「おまえねえ、おまえたちは、これは商売、これは別と考えがちだけど、商売であろうが日々の暮らしだろうが、みんな仏行なんだよ。仏様の眼は、おまえが知るも知らないも、いつでも、お前に向いている。いいかい、会社の経営だって仏行だよ。それを忘れてお金をもうけてみたところで、おまえ、気持ちがいいかい!そんなケチな根性で、長続きすると思ったら大間違いだよ!」
次の朝、社長の枕元に、墨の色もあざやかに、”何の事業も皆仏行なり”とかかれた書が置かれてありました。この日から、この言葉が社訓として掲げられたのでした。
社員全員の名刺入れにも、この言葉をかいたカードが入っているそうです。



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