12月の法話集 ~人間万事塞翁が馬~


昨今は、”占いブーム”だそうですね。たしかに、自分の人生の行く先がどうなるのか知りたいのは人情でしょう。けれど、占いだって”当たるも八卦、当たらぬも八卦”と言うくらいで、考えてみれば、まあ、あまりあてにするほどのことでもないように思います。
昔、中国の辺塞(へんさい)に住んでいた老翁は、自分の馬が隣の国へ逃げてしまったのですが、ぜんぜん気にしません。しばらくすると、その馬がなんと美しい馬を一頭つれて帰ってきました。それを喜んだ老翁の息子が新しい馬に乗ると、振り落とされて足をくじいたのです。それでも老翁は気にしません。やがて戦争が始まり、息子は足が悪いために徴兵をまぬがれ、戦死しないですみました。
この話は”人間万事塞翁が馬”といって詩の一部ですが、人間の吉や凶、禍福は定まりがたいことを教えてます。続く詩で
”推沈軒中雨を聴いて眠る”
とうたっています。これは、困ったときにはフトンをかぶって寝るにかぎる、というように受けとってよいでしょう。
生きるということは、幸不幸の織りなす一大ドラマです。あなたが主役です。
主役であるあなた、”人間万事塞翁が馬。推沈軒中雨を聴いて眠る”と天に向かって大みえを切り、そのまま寝てしまうのも、いいじゃないですか。その間に、不幸が幸福に転じているかも知れません。



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